Cesar HARADA - TEDxSeeds 2011
海洋流出石油の清掃ロボットです。 これからお話しすることは、ケニアで始まりました。 ケニアでは、テクノロジーインキュベーターで開発マネージャーに従事していました。 2010年の4月20日、メキシコ湾で石油流出事故が起こりました。 この事故は、北米大陸の歴史の中で最も深刻な環境汚染をもたらしました。 当初、私は無力感にさいなまれていました。 しかし数日後、開発を手伝っていたソフトウェアが、この事故の対応に利用されていました。 画面上の赤い点は、事故の状況報告があった場所です。 沿岸部に住む、私やあなたのような普通の人々が、メールやsmsを送ってきます。 「石油が海岸に流れ込んでいます!」、というようにほぼリアルタイムで。 それで私は、自分にも何か出来ると感じ始めました。 その数日後、MITから電話を受け、 この石油流出の清掃の為の研究に携わることになりました。 そう、さらに良い事に、 流出のマッピングだけでなく、その清掃の技術開発にも関わることができたのです。 MITはパラダイスのような場所でした。 素晴らしい技術を開発する為に沢山の時間と資金、そして友人を得ることができました。 ですがこの夢の様な生活をしている間、 私はメキシコ湾での現実から、どんどん隔絶されていると感じました。 そこですぐに、飛行機でボストンからニューオリンズへ向かい、 まず現場を確かめるため、ボートを借りました。 港に着いた時、大変驚きました。 案内してくれたボートの船長は、両足を失っていたのです。 彼は、片方の足をハリケーン・カトリーナで失い、 もう一方の足を船の修理中に失いました。 しかも石油流出の為に、漁師の仕事も続けられなくなったのです。 唯一彼に残った仕事は、流出した石油の清掃員でした。 そこで私は、自分がしていることを話したくなり、簡単に説明を始めました。 「こんにちは、セザールと言います。」 「MITからきました。」 「私はこの非常に高価なテクノロジーを開発しました。」 「5年から10年以内に利用可能になります。特許も取る予定です」と。 しかし、彼にそのテクノロジーを利用するスキルはないでしょう。 私は遠回しに、彼の仕事を奪うぞと言っていたのでした。 彼に説明している時、私は彼が怒り出しているのを感じました。 もし彼に足があったなら、私に襲いかかっていた事でしょう。 彼の眼を見た時、私は自分が今していることは正しくないと、 そして、問題の本当の解決にはなっていないと気付きました。 そして、もっと大きなコンテクストで物事を捉えようと決意しました。 漁師という仕事は、人間にとって最も危険な仕事です。 石油清掃員の平均寿命は、そんな危険な漁師の寿命よりも短い。 だから私は、遠隔操作できる清掃技術を開発しなければならない、 その技術は安価で、すぐに実行可能で、誰もが利用可能でなくては。 私はMITへ戻って調査結果を報告した後、直ぐに辞職してメキシコ湾へ向かいました。 メキシコ湾に到着した直後は、私には何も許可がおりませんでした。 流出現場に近づく事も許されなかったのです。 そこで、私はLousiana Bucket BrigadeというNPOに参加しました。 そして別のアプローチを考えつきました。 とてもシンプルなアイデアです。 普通のデジタルカメラを、ソーダのボトルの中に入れました。 大きなヘリウム風船を膨らませ、 ボトルを風船につけました。 漏れた原油の高解像度の写真を何千枚も撮りました。 合成した写真は衛星写真よりも何千倍も高解像です。 鳥も見えるし原油の到達量もわかります。 費用は200ドル未満。 これはまさに、安価で、すぐに組み立てられ、オープンソースというよい例です。 原油がどう動くかについてのさらなる研究は 衛生写真と現場作業によって行いました。 よく観察すると、石油は大きなかたまりではなく、 長い筋になって流れています。 それらが風、表層の海流、波の影響で流れています。 今こんなことをしています。 小さな船を送り、広範囲の石油を清掃しようとしています。 石油の帯と同じ長さの吸引材を使えば、 より多くの石油を回収できます。 その数を増やせば、さらに多く回収できます。 でもそんなに大きなものを風に逆らって動かすのはとても難しいことです。 大変なエネルギーが要ります。 そこでプロテイは、漏れた石油を集めるのに自然の力を使い、 風下に流れる石油を集めるため、風上に向かって帆走します。 とてもシンプルなアイデアです。 本番の前にまずプールで試しました。 普通の船で長くて重いものを引くのです。 長くて重いものを引くと二つのものが失われます。 一つは引っ張る力、 二つ目は方向です。 どうして制御できなくなるか、海の力学の基本から説明します。 ここに船体があって、その上に帆を立てます。 それによって、重心、つまり船を推進する力点がきまります。 その力に対抗するため、下にセンターボードをつけます。 後ろにつけた舵がてこになります。 長くて重いものを引く時の問題は、力と方向でした。 そこで舵を船の前側に移動しました。 ちいさな舵でとても長いものを動かせるようになりました。 ここは原油で影響されたニューオリンズの、ポンチャートレン湖です。 舵が前についています。 この単純な変更で、コントロールが大きく改善しました。 次に考えたことは、これをさらに良くするにはどうするか、 つまり、本当に重くて長いものを制御したいときにどうするかです。 また単純なアイデアです。 制御する場所を増やすのです。 これが1つめの制御点です。 制御点を増やし、舵を前後1つずつにするとどうでしょう。 こうしてこの関節ロボットを作りました。 史上初の 形の変わる船です。 応答性と敏捷性は実に驚くべきものでした。 まさに波乗り、カービングスキーや自転車で遠心力を使うようです。 さらにすごいことに、主帆と副帆が異なる方向から風を受けられます。 つまり牽引力や方位は決して失われないのです。 しかしこれはたった1メートルの船の実験でした。 大きなものでも有効か、確かめたくなりました。 同じ原理で、「プロテイ3」をつくりました。 ふくらませることができ、より大きなものです。 非常に軽く、帆の表面が大きくなっています。 これが大きな動力源になります。 この段階で、私は技術力が成功を導くと考え、 プロジェクトをオープンソースにしました。 6週間で、みなさんに少額の出資をお願いし、 300名以上から3万ドル以上のを出資をいただきました。 若い技術者やデザイナーを雇うには十分の金額でした。 ところで、オープン・ハードウェアとはどんなものでしょう? それは、誰でも自由に使用、変更、配信ができる技術開発です。 ユーザーへの依頼は2つだけです。 一つは「プロテイ」の名称を引用すること、 もう一つは、発見した技術をこのコミュニティへ共有することです。 短期的にみると、収益は上げられません。 しかし長期的には、ずっと早く、大人数で開発ができます。 しかもオープンハードウェア開発だと、 一つ一つのステップをお互い待つ必要はありません。 アート、科学、技術、デザイン、製造が、 同時並行的に開発に取り組むことができます。 私たちはさらに大きく、変わった特徴を持った「プロテイ6」を開発しました。 波の形をしていて、横だけでなく垂直方向にも関節があるので、 波のカーブに沿って動くことができます。 さらに面白いのは、その形がバナナのようカーブを描いており、 言ってみれば、飛行機の翼に似ています。 飛行機の翼がこのようについていると、機体が上昇します。 それを横に傾けると、上昇するのではなく横向きに動きます。 それによって、風に近づいたり、離れたり、より繊細に風に沿って走ることがでます。 私たちがやっていることは、基本的には航海技術の進化を早送りしているようなものなんです。 私たちははもっと複雑なテクノロジーを作り出す勢いをもっています。 多様な課題に合わせて様々なロボットを作り、いつか船団を作りたいと思っています。 石油流出は去年のメキシコ湾だけではありません。 これは10日前のニュージーランドの様子です。 プロテイは無人船舶なので、この技術を使って、応用できることがたくさんあります。 例えば、太平洋のプラスチックごみの回収です。 石油と同じ原理です。 ごみも海流で広がり、魚の数を80%以上も減少させます。 そして皆さんもご存知かもしれませんが、放射線も海に向かって広がるのです。 この計測のために、人を派遣することはできません。 したがって、計測の度に使い捨てができるような無人船舶が必要です。 私が日本に来たのはこのためです。 火曜日から、私は東京から仙台まで自転車で移動し、 海の放射線量を計測するためのプロテイの放流場所を探しに行きます。 自転車は友人から借りましたが、まだ放射能計測機を探しています。 持っている方、ぜひあとで教えてください。 これが、技術やビジネスを開発するための通常のモデルです。 私たちはこのモデルを逆さにしたいと思っています。 これ以上、人間やお金のためだけに技術を開発することはできません。 自然環境に役立つ技術開発しか道はありません。 それは私たちの生命の源だからです。 この決断を下す勇気を持たないといけないと思います。 それしか方法はないと思うのです。 ご清聴ありがとうございました。